大分前になるが、肥満体になったのはマグドナルドで食べ続けたせいであるとしてアメリカのマグドナルドを訴えた10代の子どもがいた。その時には(何というこじつけ!好きで食べ続けたのは自分ではないか!ソーダにビッグマック、フレンチフライなんかを食べていれば太るのは目に見えているではないか!)と半ば呆れ、半ば失笑したものだが、今にして思うと、あの訴訟は全く荒唐無稽だったとも思われない。

 なぜならその後「スーパーサイズ・ミー」という、マグドナルドのメニューだけを食べ続ければ確実に肥満し、健康被害が起こるという事を証明したドキュメンタリー映画も作られてアメリカ人を啓蒙するのに役立ったと思うし、マグドナルドはその後栄養のバランスを考えてサラダやスープなども販売するようになった。

 話変わって、この数年気になるのは日本の食べ物の味が大変に濃く、しかも甘ったるく、健康的なメニューが少ないという点である。料理嫌いの私は時々スーパーで半額になった惣菜や弁当を買う。はっきり言ってあまりヘルシーとは言えない。揚げ物が多いし、とにかく甘過ぎる。緩和策として肉じゃがだったら、チャチャッと玉ねぎを切って分量を増やし、酒やしょうゆを加える。それでもまだ甘ったるいが少しはマシになる。ある時買ったおからの惣菜などあまりにも甘過ぎて(まるでお菓子じゃないの!)と驚き、売り場の人に砂糖の分量を間違えたのではないかと注意したほどである。

 料理をしない人はわからないだろうが、ものすごく砂糖を使う料理の一つが酢の物である。私は砂糖を敵視しているからほんの少ししか使わない。酢の物というより酢びたしである。人に出す時には仕方がないから砂糖を入れるがちょっとやそっとの量では外で食べるような味にはならない。惣菜の酢の物などどれだけ砂糖を使っているか考えるだけで身震いする。

 私の味覚が変なのではない。むしろ、薄味の近所の食堂などでは常連の老人客に混じって私1人がしょうゆや塩を料理に加えるので「毒ですよ~」とか「あああ、そんなに塩かけちゃダメ」といつも注意されるぐらいで、濃い目の味付けが好みなのだ。その私が濃い、と感じる市販の食品がどれだけ体に悪いか、少しはおわかりになるだろう。

 そこで考えた。日本の食品業界だってマグドナルドと似たり寄ったりではないか、と。「長年塩や砂糖や添加物が必要以上に入った物を食べさせられたせいで不健康になった!」と食品会社を訴える人が出たとしても私は驚かない。業界に携わる人の義務として、安全な食品を提供するのはもちろんの事、消費者の健康に寄与する食品を提供すべきだと私は思う。